インフルエンザ
はじめに
インフルエンザ(influenza)は、インフルエンザウイルスによって起こる急性の呼吸器感染症です。
一般的な「かぜ」に比べて全身症状が強く、重症化しやすいことが特徴です。
インフルエンザの語源は、16世紀のイタリアで当時の占星家がその流行を星の影響(influence)と考えたことに由来すると言われています。
主な感染経路は、咳やくしゃみによる飛沫感染と、ウイルスが付着した場所を触ることで起こる接触感染です。
発熱、頭痛、咳などの症状をきたし、肺炎や脳症に至ることもあるため注意が必要です。
インフルエンザウイルス
インフルエンザウイルスはA・B・C型の3種類に分かれ、季節性に流行を起こすのはA型とB型です。
ウイルスの表面にはHA(赤血球凝集素)とNA(ノイラミニダーゼ)という糖蛋白があり、これらが免疫の標的になります。
とくにA型インフルエンザウイルスは多くの亜型が存在し、変異を起こしやすい特徴を持っています。
突然大きく抗原性が変わる「不連続抗原変異」が起こると、世界的な大流行(パンデミック)が発生します。
- 1918年のスペインかぜ(H1N1)
- 1957年のアジアインフルエンザ(H2N2)
- 1968年の香港インフルエンザ(H3N2)
- 2009年のインフルエンザA(H1N1)pdm2009
など、これまで世界的な大流行が繰り返されてきました。
また、同じ亜型でも少しずつ抗原性が変わる「連続抗原変異」が頻繁に起こるため、インフルエンザは毎年のように流行を繰り返します。
流行時期について
インフルエンザは毎年世界中で流行がみられます。
日本では冬季に流行のピークがあり、例年11月下旬〜12月に始まり、1〜3月に患者数が増加します。
ただし、その年によって流行の時期と程度は異なり、夏季に流行がみられることもあります。
特にインフルエンザが大きく流行すると、死亡者数や肺炎死亡者数が顕著に増加します。
ことに高齢者や基礎疾患のある方はこの影響を受けやすいことが知られています。
感染経路
主な感染経路は以下の2つです。
飛沫感染:
咳、くしゃみなどの飛沫による感染
接触感染:
ウイルスが付着した手指を介した感染
症状と経過
潜伏期間は1〜3日ほどです。
主な症状は次のとおりです。
- 発熱(38℃以上の高熱)
- 頭痛
- 全身倦怠感
- 筋肉痛・関節痛
- 咳、鼻汁
他に嘔吐、腹痛、下痢などの胃腸炎症状がみられることもあります。
いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いことが特徴です。
典型的には1週間ほどの経過で軽快します。
また、症状のみで新型コロナウイルス感染症との区別は困難です。
合併症
小児では中耳炎の合併や、熱性けいれん(熱性発作)や気管支喘息の悪化がみられることがあり、幼児では特にインフルエンザ脳症を起こすことがあるため、注意が必要です。
異常行動について
インフルエンザにかかった際に、抗ウイルス薬の服用の有無や種類にかかわらず異常行動が報告されています。
重度の異常行動については、就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多いこと、発熱から2日間以内に発現することが多いことが知られています。
<異常行動の例>
- 突然立ち上がって部屋から出ようとする
- 興奮して窓を開けてベランダに出て、飛び降りようとする
- 自宅から出て外を歩いて、話しかけても反応しない
- 人に襲われる感覚を覚え、外に飛び出す
- 変なことを言い出し、泣きながら部屋の中を動き回る
インフルエンザで自宅療養をする場合には、発熱から2日間はとくに行動の様子に注意して、窓やベランダから転落するなどの事故の防止対策をお願いします。
<転落などの事故の防止対策の例>
- 玄関や窓の施錠を確実に行う
- ベランダに面していない部屋で寝かせる
- できる限り1階で寝かせる
インフルエンザの重症化リスク因子
- 高齢者
- 呼吸器、循環器、腎臓などに慢性疾患がある方
- 糖尿病などの代謝疾患がある方
- 免疫が低下している方
診断について
外来では鼻腔の奥を綿棒でぬぐい、インフルエンザ抗原検査を行うことで診断します。
治療について
インフルエンザの治療は、抗ウイルス薬が中心です。
抗インフルエンザウイルス薬は、発病から48時間以内に服用すると症状を軽くし、回復を早める効果があります。
また対症療法として解熱剤を用いる場合は、アセトアミノフェンが推奨されます。
予防とワクチン
感染対策
インフルエンザの予防には、基本的な感染対策が重要です。
- こまめな手洗い
- 咳エチケット
- 人混みや医療機関などを訪れる際のマスク着用
ただし、子どものマスク着用については発育や発達への影響にも配慮し、無理のない範囲で着用することが大切です。
ワクチン
インフルエンザワクチンには、2種類のワクチンがあります。
不活化ワクチン(皮下注射)
生後6か月以上が対象
経鼻弱毒生ワクチン(フルミスト点鼻)
2〜19歳未満が対象
インフルエンザワクチンには、いずれも発症をある程度抑える効果と、重症化を防ぐ効果があります。
通常は任意接種ですが、とくに高齢者では必要性が高いことから定期接種となっています。
インフルエンザ定期接種
対象者
65歳以上
60歳以上65歳未満で心臓、腎臓、呼吸器の機能またはヒト免疫不全による免疫の機能に障害を有する人(身体障がい者手帳1級程度)
ワクチン
インフルエンザ不活化ワクチン
接種方法
皮下接種 1回
登園・学校について
インフルエンザは、学校保健安全法で「第二種感染症」に指定されています。
発症後5日を経過し、かつ解熱後2日(幼児は3日)が経過するまでは、出席停止となっています。
