注意欠如・多動症
ここでは注意欠如・多動症(ADHD)についてみていきます
ADHDとは?
注意欠如・多動症(ADHD)は、集中が続きにくい「不注意」と、落ち着きがなく抑えがきかない「多動・衝動性」とを主な特徴とする神経発達症(発達障害)のひとつです。
「不注意」や「多動・衝動性」の症状は生まれつきの脳機能障害を背景とするもので、決して「育て方のせい」や「怠けている」のではありません。
ADHDは、お子さんの5~7%にみられるといわれており、決してめずらしいものではありません。
どんな症状があるの?
「不注意」の症状
- 集中が続かず、ミスが多い
- 注意がそれやすく、集中できない
- 忘れ物やなくし物が多い
- 課題をやり遂げることができない
「多動・衝動性」の症状
- じっとしていられない、そわそわする
- 座っていられなくて、席を離れてしまう
- しゃべりすぎる
- 順番を待てない
これらの症状が、家庭や学校など複数の場面で、12歳になる前から 続いている場合はADHDの可能性があります。
併せてみられる疾患や問題
ADHDのお子さんは、ほかの神経発達症(自閉スペクトラム症、限局性学習症、チック症など)や、睡眠障害、不登校などの問題が併せてみられることがあります。
また反抗挑発症や不安症、抑うつなどにいたることもあり、学校や社会、家庭生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
ADHDの経過について
ADHDの特性は生涯にわたるものと考えられますが、多動さについては小学校高学年〜中学生ころに落ち着いてくる傾向があります。
一方で不注意さや、思考の多さと展開の速さ、唐突な意思決定や感情の激しさといった特性は、大人になっても続く傾向がみられます。
ADHDのお子さんは、その特性から日常生活において失敗や厳しい叱責を被ることが多く、反抗挑戦的になったり、自尊心がもてずに不安が強くなったり、抑うつにいたるといった、二次的障害のリスクがあります。
そのため、早くから養育者がお子さんの特性を理解して受け入れることが大切です。
そのうえで周囲から適切な支援と配慮を受けることで、学校や家庭生活にうまく適応できることが期待されます。
治療と支援
ADHDの治療目標は「症状を完全になくすこと」ではなく、症状の軽減によって「日常生活の困りごとが減って、うまく折り合えること」です。
心理社会的治療
環境調整:
家庭や学校の環境を調整することで、問題となる行動を減らします。
- 指示を伝えるときは、子どものすぐ近くに行って伝える
- 予定をあらかじめ伝えておく
- 写真やイラストなど視覚的な補助を用いる
- おとなしく待つときは、集中しやすい役割や作業を与える
- 教室での席を先生のすぐ前にする
- 課題を小分けにして、短時間で終わるようにする
- 課題を行うときは、気が散る刺激を減らす
- 興奮したときに、クールダウンできる環境を設ける
といった対応が挙げられます。
ペアレント・トレーニング:
ペアレント・トレーニングは、保護者を対象として行われるものです。
お子さんが持つ特性の理解を深め、どのように接するべきかを学ぶことで、適切にお子さんをサポートできるようになります。
子どもの良いところに注目することや、行動をタイプに分けて対応する、行動を分析して理解する、不適切な行動への対応の仕方などを学びます。
国内では次のようなトレーニング・プログラムがあります。
鳥取大学式:
応用行動分析を用いた講義やワークを行っていくトレーニング方法です。
応用行動分析とは、行動のきっかけや結果に着目したうえで、行動の前後を変えていくことで適切な行動を促していく手法です。
精研式(まめの木式、奈良式):
子どもの行動を、好ましい行動、好ましくない行動、許しがたい行動の3つにわけ、それぞれの対応方法を考えていくトレーニング方式です。
肥前式:
特定の行動についてグループで考えたり、家庭で記録したりするワークがあるのが特徴です。
困っている行動について一つ一つ解決方法を考え、着実に問題を解消していくことを目指します。
愛知県医療療育総合センターでは、親子療育の家「親子支援プログラム」を行っています。
プログラムの内容などについては下記にお問い合わせください。
愛知県医療療育総合センター 親子療育の家
電話 0568-88-0811
受付時間:平日 9:00〜17:30
心理療法:
子ども本人を対象として、認知行動療法、プレイセラピー、ソーシャルスキル・トレーニングなどが行われることがあります。
当院では個々のお子さまの状態に応じて、臨床心理士によるカウンセリングのほかに、遊戯療法(プレイセラピー)、箱庭療法などを行っています。
薬物療法:
心理社会的治療で症状や問題の改善が十分に得られない場合は、薬物療法を検討します。
薬物療法の目的は「症状を軽くして生活しやすくする」ことです。
ADHD治療薬にはアトモキセチン(ストラテラ)、グアンファシン(インチュニブ)、メチルフェニデート徐放錠(コンサータ)などがあり、それぞれ効果や副作用などに違いがあります。
早期理解と支援が大切です
ADHDの子どもは、その特性ゆえに失敗を繰り返したり、厳しい叱責を受けたりしやすいため、自信を失いやすいことを周囲がよく理解して関わることが大切です。
そうでないと、保護者としても叱り続けることに疲弊し、子育てに自信を失ってしまうことにつながります。
早くから適切な支援を受けることで、問題となる行動が軽減しやすくなり、学校や家庭生活にうまく適応できると本人の自信につながり、周囲との関係も改善しやすくなります。
ADHDは「親のせい」でも「努力が足りないから」でもありません。
お子さんの持つ特性をよく理解し受けとめて、家庭と学校と医療機関や福祉機関が協力して支えることが大切です。
