風邪(かぜ)
子どもに咳や熱がでて受診すると、医師から『風邪(かぜ)ですね』と言われることがよくあります。
それでは、「かぜ」とはいったいどんな病気なのでしょうか?
「かぜ」とは?
「かぜ」は、ウイルスなどの病原体が鼻やのどに感染して起こる、自然に治る病気です。
「かぜ」を起こす原因のほとんどはウイルスで、200種類以上あるといわれています。代表的なものに、ライノウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルスなどがあります。
中でも、よくみられるのがライノウイルスで、これだけでも100種類以上の型があります。また、ウイルスによって変異を起こしたり、流行しやすい季節などがあります。
まれに溶連菌や肺炎球菌、マイコプラズマなどの細菌が原因となることもあります。
同じウイルスに感染しても、年齢や体の免疫力によって、ただの「かぜ」で済むこともあれば、気管支炎や肺炎、脳症などの重い病気につながることもあります。
子どもはなぜ「かぜ」をひきやすいの?
特に乳幼児は、さまざまなウイルスに対する免疫(体を守る力)がまだないため、よくかぜをひきます。
アメリカの統計では、子どもは年に平均6〜8回、多い子では12回以上「かぜ」をひくことが報告されています。
保育園などの集団生活が始まると、「かぜ」をひく回数はさらに増えます。入園して最初の1年間は、家庭で過ごす場合の1.5倍以上「かぜ」をひきやすく、特に年齢が低いほどその傾向が強くなります。
「かぜ」の症状は?
主な症状は、のどの痛み、鼻水、鼻づまり、咳、発熱です。また体に発疹が出ることもあります。
多くの場合、これらの症状は1週間前後で自然によくなりますが、鼻水や咳が2週間ほど続くこともあります。
このため『かぜがずっと治らない』と感じることもありますが、実際には次々と違う「かぜ」にかかっているケースが多いのです。特に入園後は『ずっとかぜをひいているみたい』と心配される保護者の方も多いですね。
でも、大丈夫
いろいろな「かぜ」を経験しながら、子どもは少しずつ免疫をつけて、たくましくなっていきます。
「かぜ」を治す薬はあるの?
「かぜ」の原因であるウイルスには、基本的に特効薬はありません(インフルエンザは例外です)。抗生物質は細菌には効きますが、ウイルスには効かないため、通常の「かぜ」には必要ありません。
いわゆる「かぜ薬」は、咳をしずめる、痰を出しやすくする、熱を下げるなど、症状を和らげるための薬です。これらを飲んだからといって、「かぜ」自体が早く治るわけではありません。
「かぜ」はどうやって治るの?
ウイルスが体に入ると、鼻やのどで増えていきます。すると体は、それを追い出すために鼻水や咳を出したり、わざと体温を上げて熱を出し、ウイルスの増殖を抑えようとします。こうした症状はすべて、ウイルスに対する防御反応なのです。
つまり、「かぜ」は薬で治すというより、子どもがなるべく楽に過ごして安心できる環境を整え、症状にあわせたケアをして「治るのを待つ」ことが大切です。よく眠り、ゆっくり休むことも必要です。
また、日頃から規則正しい生活を心がけ、体調を整えておくことが「かぜ」の対策になります。
家庭で気をつけてほしいこと
ほとんどの「かぜ」は自然に治りますが、なかには「かぜ」をきっかけに、中耳炎、副鼻腔炎、肺炎などの合併症を起こしてしまうことがあります。
また、最初は「かぜ」だと思っていたら、実は麻しん(はしか)、百日咳、結核などのやっかいな感染症であったり、川崎病や白血病などの深刻な病気であることもあります。
どんな医師でも、最初の症状だけで常に正しい診断をすることはできません。ですから、子どもの食欲や元気さ、機嫌などの状態と、症状の変化をよく観察し、気になることがあれば受診して、医師とともに経過を見ていくことが大切です。